2023年10月17日 2023.10.12〜13 日本下水道協会主催「第 35 回下水汚泥有効利用セミナーin 秋田」に参加しました

【聴講、講演、パネルディスカッション】

1日目は、国交省、農水省、鶴岡市、秋田高専、山形大学など10件の講演を聴講し、パネルディカッションに参加しました。全国から協会正会員・賛助会員が集まり、会場75名、オンライン98名、計173名の聴講者がありました。

黒部Eサービス代表取締役 大矢が「黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用事業における汚泥有効利用」について講演しました。講演要旨は添付の通りです。

~聴講して印象に残ったキーワード~

国交省:ウクライナ問題に端を発した、国産有機肥料の拡大政策。下水汚泥の利用は肥料化を優先する。

農水省:菌体リン酸肥料登録制度 2023年10月からの新規程。リンの含有量の規定を盛り込んだ新規肥料登録制度。

上野台堆肥組合:アキポスト/下水汚泥のコンポスト。完熟堆肥。放線菌培養。微生物製剤噴霧による消臭(脱臭設備なし)。病害虫に強い。・・・etc

秋田高専:酒米栽培と地酒「酔思源(すいしげん)」製造。実験フィールドとなる水田探し(水稲農家との交渉)、酒蔵との交渉が大変だったが、理解も得られた。

【秋田県臨海処理センター、上野台堆肥生産協同組合、ホウレンソウ農家の視察】

【秋田県臨海処理センター】:B-DASHで採択された「超高効率固液分離(M社製)」。

【上野台堆肥化施設】:放線菌(白カビのような菌体)などの多様な菌体培養環境の徹底管理と、7~9次発酵まで行う完熟堆肥製造。発酵日数60日+完熟養生1~2ヶ月。微生物製剤噴霧により脱臭設備なしで消臭。近隣からの苦情無し。農家の評判も良好。一般的に汚泥堆肥は未熟堆肥が多く、「土地が痩せる」とか「地力を減衰する」と農家の評判は悪かったのですが、この堆肥は地力を上げると好評。化成肥料と農薬より値段も安いので、需要が増えているそうです。

<堆肥舎>
<アキポスト(7次発酵後の完熟堆肥)>

【ホウレンソウ農家】:アキポストを使ったホウレンソウのハウス栽培。減反政策のあおりを受けてホウレンソウ栽培に転換。「1年目から地力も上がり、良好。ハウス栽培なので一年中出荷できる。農薬が効かなかった病気も克服できた。」と農家の評判は良い。ご主人が顕微鏡で生きた放線菌を見せて下さいました。微生物の活性を観察して土壌の健康管理をしていらっしゃいます。

<ハウス内部>
<無農薬有機栽培「まごころホウレンソウ」>
<顕微鏡で微生物観察>

~視察の所感~

・下水汚泥肥料は、窒素が多いので葉物には良いが、水稲には使いづらい。たんぱく質が増え雑味が出る。それなら無理して食用のお米に使うのではなく、飼料米や燃料米にした方がよいのでは。

・「ビストロ下水道」のように敢えて下水由来であることを公表するのは、かえってマイナスイメージ。安全性さえ担保されれば、下水の影は消し、単純に美味しく売れるものが作れれば良いのでは。

・発酵途中の中途半端な未熟堆肥は「地力を損なう」「土地が痩せる」。そのことで農家の評判を悪くしていた。未熟堆肥は、その中の元気な微生物が土壌の栄養を吸収してしまうから、そうなのだと理解できた。汚泥堆肥は肥効成分が一定ではないので、使ってみないと分からないという点も、農家が敬遠する所以か。でも、勇気をもって使ってみて、結果が良ければ国内食料自給率アップに繋がる。

・下水汚泥の肥料利用は、国の施策だけでは広がらない。有機栽培を志向する農家と消費者の理解と賛同が得られるかが鍵。

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